感情を揺さぶる光

-見えないくらい淡い光に出会う-

マンションにインストールされたインスタレーションアート作品。
マンション内に専用に設計した高さ12mの空間に設置されている。LIFEの入居者はいつでもこの作品を体験することができます。

この作品は、暗い空間で、様々な質の光を浴びることにより起こる感覚や感情の変化を体験するインスタレーションです。
当たり前に世界に溢れていて意識しにくい光。この空間は光をコントロールし音とともに出現させます。
認識するのが困難なほど暗い微妙な光から、太陽のように眩しい光までをこの空間の中で浴びることができます。

ここに誕生する光は、ほぼ熱はありません。自然光よりもソリッドに光を感じることが可能になっています。その光を浴び、体験していると、やがて光の物質としてのソリッドな存在を意識するようになるでしょう。そこに自分と現実世界との朧げな接点を感じることができるように思うのです。

SPEC

LEDを使用したインスタレーション
LEDとは発光ダイオードと呼ばれる半導体のことで、電圧をかけるとLED 内で電子が発生して、それがぶつかることにより発光しています。従来の白熱電球とはフィラメントを熱して発光させており、その調光器は電圧を弱めたり強めたりすることで白熱電球の明るさを変化させていました。仕様の異なるLEDでは従来のような調光は困難で、電源OFFかON、要するに明るさで示すと「0か100」というのがLED照明使用の基本となっていました。しかし、本作「expose」では、これらの明るい表現が必要なのはもちろんのこと、作品のコンセプトを表現させるために”朧げな光”を準備する必要がありました。 そこで” 暗い”光の表現を追求するために、調光段階の多いLED専用調光器を新設計で生産。速い速度でライトの明かりを振動させることによりLEDの光の暗さを作り出しています。今作では、4,096にも及ぶ多段階調光を可能とし、滑らかな調光を実現しました。LEDの総数は約17,000 個。使用LED を並列すると272m にも達します。側面のLEDはRGBフルカラーを使用。使用した調光器の数は 17 枚。使用電源の数は37 個にも及びます。

LEDの明滅は、定型の進行(タイムライン)で表現される箇所と、プログラムによるランダムな要素が混じり合って、コンピュータを介して再生されています。サウンドは、グランドレベルと空間上部に配置された計6台のスピーカーによる、LEDプログラムと連動した光と空間のための音響演出です。単なる映像の物語性の伴奏ではなく、音像の空間内の移動/音色の暫時的変化などによる、体験者の空間意識・皮膚感覚それ自体に物語性を発生させることは可能かという点にフォーカスした作曲および音響演出を試みています。
ハードウェアは、アンプ数台とイコライザ、USB DACを使用し、コンピュータを経由して再生しています。LEDの明滅と音をコンピュータに制御させることにより、ある音は、LED の明滅に則り明滅した時に鳴るというようなプログラム制御をおこない、また別の音は、楽曲としてLED の明滅とは関係なく、トラックとして進行していきます。 光と音との絶妙な組み合わせは、コンピュータ プログラムによりサウンドのレイヤー再生を実現し、光と音響ともにエキシビジョン クォリティの高い技術を採用しています。
音楽は高橋琢哉氏