


周年記念の映像や冊子は、多くの場合「歴史の語り直し」にとどまる。創業の精神、年表、経営者のメッセージ──それらは正しいが、いま働いている人の体温は映らない。全国に分散した拠点を持つ企業において、「いまの姿」をブランド資産として可視化するには、モノローグではなくポリフォニー──一人ひとりの存在を同じ精度で写す構造が必要だった。

「全員が主役」というコンセプトのもと、全国の事業所を巡る移動式撮影体制を構築した。広告現場で信頼のあるヘアメイク・制作スタッフを起用し、統一したビジュアル基調を設計。被写体の職種や性格に合わせたポーズと会話設計を行い、対話と沈黙のあいだに生まれる"その人らしさ"を見極め、無理に演出せず写し取った。


背景紙とProfotoの大光量ストロボを搭載した移動式スタジオを全国に持ち込み、どの拠点でも同一条件で撮影。照明と空気の密度を合わせ、職場の空気感を漂わせつつも中立なトーンで統一した。道中では各地の街並みや風景も記録し、"働く場所の風景"を挿話として織り込む構成としている。色調管理とプリントプロファイルを統一し、330名のポートレートを「一人ずつの物語」かつ「全体の呼吸」として一冊の冊子に束ねた。

写真と映像の二軸で構成された周年プロジェクトとして、社外へのブランド発信と社内の結び直しが同時に機能した。「同じ光の中に全員がいる」という視覚的一致が、拠点を超えた組織の一体感を質的に強化した。 自分が写るだけでなく、同僚の存在を「誇りある肖像」として再発見するという体験が、社内エンゲージメントの向上に大きく寄与。 140年という時間の延長線上にある「これからの企業像」を、抽象的なスローガンではなく、330名の具体的なリアリティとして提示したことで、採用やブランド発信における強固な基盤を確立した。
























