


クラブ空間の映像演出は、既存のステージに映像を「追加する」形が大半だった。照明、音響、映像がそれぞれ独立して設計されるため、体験としての密度には上限がある。エレクトロニック・ポップユニットのライブ演出と、渋谷の新設クラブのステージ設計を同時に手がけるこの案件では、映像を空間に"投影する"のではなく、空間そのものを映像装置として成立させる前提設計が必要だった。

映像・音響・照明・構造を個別に発注し統合する通常のフローを取らず、ステージの構造設計からプロジェクションシステム、映像演出までを一人の設計図の上にまとめる判断をした。デジタルと物理の境界を消すためには、各レイヤーの干渉を設計段階で解消しておく必要がある。照明とレーザーの反射が映像投影に干渉しないよう、ステージ壁面の素材特性と反射率を先に確定し、映像の色域・輝度の設計に反映させた。演奏動線と映像展開を同一のタイムラインで組み、演者の立ち位置が映像の構図に組み込まれる構造を選択している。


映像素材を3DCGで制作し、空間的深度を持つモーショングラフィックスを設計。プロジェクター配置、補正、サーバー同期を含むマッピングシステムを自ら構築した。ステージ壁面の凹凸や反射素材を解析し、最適な投影角度を設計している。

映像・照明・音響が一体化した空間演出として、クラブ空間を"映像体験装置"へ再構築する試みが成立した。ステージ設計からシステム構築、映像制作、撮影までを単独で完遂したことで、レイヤー間の情報摩耗がゼロとなり、構想段階の密度がそのまま現場に着地している。分業では到達しにくい統合密度が、デジタル演出の可能性を拡張する一つの実証となった。
























