再生する美

Reincarnation of the Beauty

Collaboration: DAIWA HOUSE INDUSTRY

Black silhouette of a person holding a heart-shaped balloon.

再生する美

Reincarnation of the Beauty

Installation Art / Permanent Work

美の感覚は、いつも時間の消失点で揺らいでいる。 現れては消え、また別のかたちで立ち上がる─その循環そのものが、美の本質を形づくっているのではないか。 この作品は、花という記号を媒介にしながら、知覚が“途切れる瞬間”の連続として美を再構成する試みである。

statement

人間は、美を「定着させよう」とする衝動を持ちながら、同時にそれが決して留まらないことを知っている。
咲く、萎む、落ちる

─生命のはかなさが連続するとき、その運動そのものが“美の出現条件”へと変わる。

この作品では、10日間かけて収集した無数の瞬間を、8Kの解像度のまま空間に漂わせ、
「写真でありながら、動画であり、どちらでもない状態」へと変換している。
花はプログラムによって順行・逆行・停止を行き来し、時間の秩序をかすかに攪乱する。
鑑賞者は、そのわずかな破綻の中に、像としての呼吸、光としての気配、存在の重みを知覚することになる。

私が関心を寄せてきたのは、“美が存在するのではなく、成立してしまう瞬間”である。
それは、The Unchosen で扱った「構造が人を立ち上げてしまう瞬間」とも、写真作品で掘り下げてきた「美の構造的成立」ともつながる。
一枚の写真が捉える決定的瞬間ではなく、
“定着しないがゆえに持ちうる美”を、どこまで視覚化できるか─その問いへの応答として、この作品は位置している。

8Kの圧倒的な情報量と、ランダム性を孕むプログラムは、
自然界の“ほぼ同じなのに、二度と同じではない”揺らぎを模倣し、鑑賞者の知覚を閾値まで押し上げる。
そこに立ち上がるのは、花そのものの姿ではなく、「美が更新され続けるという事実」である。

永遠ではないものが、永遠のふるまいをしてしまう。
その矛盾を、私は一度、作品として提出してみたかった。
そして、それを毎日通り過ぎる生活者が、ふとした瞬間に受け取ること─その行為の連続こそが、この作品の核になっている。

CHAPTER 1|循環としての美

花は咲き、散り、枯れ、また別の場所で姿を変えて戻ってくる。
生命の周期は一度きりの線ではなく、緩やかなループを描き続ける。

本作はその循環の“速度”を人工的に操作し、
人間の知覚が捉えられるスケールにまで引き寄せた。
美とは本来、止められないものを「見よう」とする行為そのものだ。

CHAPTER 2|写真と映像の境界線

動画には始点と終点がある。
写真には決定的瞬間がある。
そのいずれの構造からも自由になるために、
プログラムは“順行・逆行・停止”を不規則に繰り返すよう設計した。

鑑賞者が毎日この作品の前を通ることを前提に、
“終わらない変化”を住空間に導入する。
それは生命が持つ循環性の“影”であり、
消失と再生の気配が、静かに漂い続ける。

CHAPTER 3|知覚の閾値へ

空間は 99% 以上の光を吸収する特殊塗料で“黒の虚無”をつくり、
そこに花の像だけが浮遊する。

解像度はA1プリント相当の質感を保ちながら、
映像として動き続ける。
光と音は複数レイヤーで同期し、
鑑賞者の知覚を、「見える/見えない」ぎりぎりの境界に連れていく。
美が定着せず、揺れ続けること。
その不安定さこそが、この作品の中心にある。

Creative Process

Photography|10日間の連続撮影

華道家による花をスタジオで10日間連続撮影。
8K RAW 静止画を約10,000枚収集し、「咲く・萎む・枯れる」の運動を記録。

Programming| 時間の撹乱

静止画群をプログラムに取り込み、
順行/逆行/停止をランダムに切り替えるアルゴリズムを設計。
映像作品ではなく、時間構造そのものを提示する装置として構成。

Space Design|黒の虚無

99%超の光吸収塗料による空間構築。
上下に彫り込まれた建築構造にスピーカーを内蔵し、
像と音が“空間から発生する”ように設計。

Sound|MIYAVI氏による10レイヤー構造

10レイヤーの音響をプログラムと同期させ、
視覚と聴覚の両方から“再生”の運動をつくる。
順再生・逆再生・停止がビジュアルに呼応する音響設計。
音楽/サウンドはMIYAVI氏。

CONTEXT|美が再生し続けるという視点

Reincarnation of the Beauty は、
光・像・存在の境界を問う一連のインスタレーションの中でも、
“生命の時間構造”を扱った最初の大規模な試みにあたる。

ZEN で気配の生成を扱い、
Transmittance Wood で光の実体性に踏み込み、
SPECTRUM/EXPOSE では知覚の閾値と空間的体験を育ててきた。

その延長線上で本作は、
「美とは固定された属性ではなく、知覚が更新されるプロセスそのものだ」
という考えを、最も直接的なかたちで可視化している。

写真・映像・CG・物質・音が一体化したこの作品は、
のちの The Unchosen における
“構造が像を成立させる”という思想の源流にもつながっていく。

CONTACT

Commercial / Brand / Photography / Art / Visual Development
Night sky filled with countless stars and the Milky Way galaxy visible above a dark silhouette of trees.
Young woman in a light dress looking up against a clear blue sky.
Silhouettes of two people on a rocky hill during a colorful sunset with a starry sky.
Hand reaching towards bright sunlight with blurred green foliage in the background.