Menu
About
About
Services
Services
Works
Works
Art
Art
Journal
Journal
Contact
Contact
Tangent Point
第38回 キヤノン写真新世紀 優秀賞
Excellence Award, Canon New Cosmos of Photography 2015
Tangent Point
第38回 キヤノン写真新世紀 優秀賞
Art Photography / Conceptual Series
風景の中で、世界と私の距離が一瞬だけ消える瞬間がある。 Tangent Point は、その“交わる点”に反応する視線そのものを記録しようとする試みである。 現象と観察者の意識が重なる不可逆の一点を、写真という最小の単位で捉えようとしたシリーズである。
STATEMENT
都市の光が揺れ、風がふと向きを変える。
その一瞬だけ、世界の距離がふっと消えるように感じる時がある。
Tangent Point は、その“交わる瞬間”に対する観察から生まれた。
風景は常に流れ続けているが、私たちはその中のほんのわずかな“点”に反応し、
そこに意味や構造を見てしまうことがある。
その反応の正体は、世界を見る視線が、一瞬だけ輪郭を持つ感覚に近い。
私はその瞬間を「世界と私の距離がゼロになる交点」と捉え、
実際の風景から、視線の発生そのものを抽出しようとした。
写真とは、現象の記録である前に、
「視線がどのように世界を切り取ろうとしたか」という、
行為の痕跡をとどめるメディアだと思う。
そして、その痕跡が最も露わになるのが、
世界の側とこちら側の視線が重なる、再現不可能な一点である。
Tangent Point は、視線の誕生を扱う試みであり、
後につながる Unfolding(時間の層)や Frozen Butterfly(構造の微細化)の
“はじまり”に位置する作品でもある。
CHAPTER 1. Perception
視線が立ち上がる瞬間
光が差し込み、陰影がふと角度を変える。
その変化のごく短い間だけ、風景がこちらを見返すように感じられることがある。
Tangent Point は、この「視線が立ち上がる瞬間」を主題としている。
反復する影、水平線の傾き、物の配置、距離の誤差。
それらの要素が偶然同時に揃うとき、
世界の“構造”が一度だけ立ち上がり、観察者の意識と同期する。
私はその同期点を“現象が私の視線に触れた瞬間”として扱い、
環境そのものが視線を返してくるような、
ごく短い生起の時間を写真的に定着させた。
CHAPTER 2.Generation
交点としての現象をどう提示するか
現象と視線が交わる瞬間は、ふつうは気づかれずに通り過ぎていく。
そこで私は、風景全体ではなく、“触れた一点”を抽出する形式で撮影を行った。
構図を過度に整えず、
むしろ現象が“こちらへ向かう瞬間”を優先して選ぶ。
光の方向、影の速度、人工物の線。
それらの要素をひとつの交点として扱うことで、
風景が持つ見えにくいリズムを、そのまま提示できると考えた。
後の
Unfolding
が「時間の連なり」を扱ったのに対し、
Tangent Point は「瞬間の一点」を扱う。
写真というメディアにおける“最小単位”としての視線を、
どこまで正確に記述できるかという問いがあった。
CHAPTER .Definition
写真とは“視線の痕跡”である
Tangent Point を制作する中で、
写真とは単なる出来事の記録ではなく、
“視線が選び取った点の痕跡”であると改めて理解した。
世界の側で起きている現象と、
観察者の内部で目が反応するタイミングが、
たまたま一致したときにだけ、写真がひとつの形になる。
この作品は、写真を「世界の構造が一度だけ収束した形」として捉える試みであり、
同時に、あなた自身の中にある“見る行為そのもの”を
再認識させるための装置でもある。
Process
Structure|構造
視線が触れた“点”の構造を抽出する
Tangent Point は、現場で感じた「反射的な手触り」を最優先している。
明確な狙いよりも、構造が自ら立ち上がる瞬間に反応する。
そのため、フレーミングも厳密な操作ではなく、
現象がこちらに触れた時点で切り取るという姿勢を採った。
風景の線、人工物の角度、光の軌跡。
これらが“交点として成立した瞬間”だけを撮影することで、
現象と視線が同期した点の構造を抽出している。
Design
観察の方法とプロセス
私は長い時間をかけて、都市の光景の中に潜む“揺れ”を探しつづけた。
動き続ける環境の中で、私が反応した一点を信じ、
その微妙な違和感の正体を確かめるように撮影した。
構造的に整理された写真ではなく、
世界がふと“こちらへ傾く”ように見える瞬間を拾い上げる。
その生の観察こそが、Tangent Point の核となっている。
Curation
交わる瞬間だけを残す選択
撮影後、あらゆる現象の中から
“世界と私が交差した瞬間”だけを残す作業を行った。
風景的に美しい写真ではなく、
視線が一度だけ震えた記憶に近いものだけを選ぶ。
その選択の連続が、作品全体に一貫したリズムを与えている。
Finishing
最終調整としての距離の決定
プリント段階では、
その瞬間の温度や湿度、空気の密度がわずかに残るように
コントラストや色域を調整した。
Tangent Point の写真は、
“距離がゼロになる瞬間の空気”が残ることを重視し、
過度な演出を加えずに仕上げている。
Context
Tangent Point は、私の写真制作におけるもっとも初期の“視線の起点”である。
風景の中で、世界と私の距離が一瞬だけ消えるような、
その不可逆の交差点を探す行為からすべてが始まった。
現象と視線が重なり合う、そのわずかな時間。
それは、後に
Unfolding
で扱う“時間の層”へ、
さらに
Frozen Butterfly
で展開する“構造の微細化”へとつながる、
観察の思想の源泉となった。
本作は「第38回キヤノン写真新世紀 優秀賞」(フリッツ・ヒールスベルグ選出)を受賞し、
講評では“日常の中に潜む詩的視線”と評された。
この評価は、私が「写真とは視線の痕跡である」という考えに立ち戻り、
見るという行為そのものを再定義する重要な契機となった。
Critic’s Comment
“His photographs give a fresh perspective on familiar environments.
Poetic, open, and distinctly his own.”
—
Frits Gierstberg, Curator / Canon New Cosmos of Photography 2015
Back to arts
More Art works
太陽光の“質”を再構成する光の滝
SPECTRUM
光が物質になる瞬間
世界と交わる瞬間を記録する
Tangent Point
第38回 キヤノン写真新世紀 優秀賞
A distance that was never closed
Distance / After
After the relation ended
Start from the Premise.
まだ構想段階でも、相談から始められる。
企画書が固まっていなくても構いません。
構想段階の壁打ちから、演出、撮影、技術実装まで、
プロジェクトの状態に合わせて柔軟に対応します。
Start with Premise Design